【簡潔に】次亜塩素酸による殺菌・消毒の作用機序

次亜塩素酸(HOCl)は水分子(HOH)の水素が一つ塩素に置き換わった化合物です。強力な殺菌作用があり、昔から医療や食品業界で使われてきました。

ところで、なぜ次亜塩素酸が強力な殺菌作用を発揮するのでしょうか。ここでは、そのメカニズムについて述べたいと思います。

参考にした資料日本食品微生物学会雑誌

次亜塩素酸に含まれる塩素は、酸素に電子を一つ取られている塩素ラジカル(Cl+)の状態で、非常に不安定です。塩素が安定な状態になる為には、電子を2つ足して、塩化物イオン(Cl-)の状態になる必要があります。そこで塩素ラジカルは、他の化合物から無理やり電子を奪うことで安定になろうとします。ターゲットとなりやすい部位は、図に書いたようなC=Cなどの結合部位であることが分かっています。このような部位はどこにあるのかというと、細菌やウイルスの構成蛋白質や核酸などです。細菌やウイルスの中に入り込んだ次亜塩素酸は、蛋白質や核酸から無理矢理電子を奪います。奪われた細菌やウイルスは壊れてしまい、生きていくことができません。

もちろん、蛋白質や核酸からできているのは、僕たち人間やペット等の動物も同じです。使い方を間違えれば健康被害が出る可能性がありますので、使用上の注意をしっかりと守りましょう。

コメント

  1. […] 【簡潔に】次亜塩素酸による殺菌・消毒の作用機序 […]

  2. SY より:

    はじめまして。

    次亜塩素酸の殺菌の作用機序がよくわからなかったので、大変参考になりました。
    色々サイトを見てきたのですが、こちらが一番分かりやすかったです。

    ただ、酸化作用(塩素ラジカルによる電子の奪取)によりなぜ洗浄と漂白が起きるのかよくわかりません。
    (脱臭については、悪臭を放つ分子や細菌が酸化作用によって破壊されるためだと考えています。)
    洗浄作用は、汚れのもととなる分子や細菌の塊が、やはり脱臭作用と同じように、酸化作用により分解・破壊されて剥がれ落ちていくため、でしょうか?
    では漂白は??・・・漂白が一番分かりません。
    なぜ酸化されると色がなくなるのでしょうか?

    機会がありましたら教えてください。

    あと、このブログの最初の部分「なぜ効果を発揮するのか」で、「塩素を奪いたがる塩素ラジカル」となっています。「電子を奪いたがる塩素ラジカル」ですよね。(笑)

    • キノすけ より:

      お返事が大変遅くなってしまい申し訳ありません。コメントありがとうございました。諸事情によりサイトを放置してしまっていましたが、このようにレスを頂けると、今後の更新の励みになります。
      さて、ご質問頂いた漂白の機序についてですが、これは推察されている通り、酸化作用によって色を吸収する構造を持つ分子(色素)が破壊されることによると私も考えます。漂白剤のターゲットになる色素は様々なものがありますが、植物性(醤油、ケチャップ、果汁など)であれ動物性(血液など)であれ、塩素のターゲットとなるC=CやC=Nなどの結合を持っており、そこを切断することで構造を保てなくなり、分解されるということだと思います。私がごちゃごちゃ言うより簡潔に書いてくれているサイトがありました。リンクを貼りますので、参考になりましたら幸いです。
      https://www.nikkakyo.org/system/files/column275.pdf

      そして、誤字の件、大変失礼しました。おっしゃる通り、電子ですね。大元のファイルがないので不自然な修正になるかもしれませんが、修正します。ご指摘ありがとうございました!

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