過去にもあった!?世界的大流行した伝染病の恐怖

新型コロナウイルスが世界中を騒がせています。外出自粛が続き辟易とする毎日ですが、ふとこのような世界中を巻き込んだパンデミックってこれまでもあったのだろうかと疑問が生じました。実は過去にも人類は度々伝染病の恐怖に直面してきたようなのです。この記事では、これまでに発生したパンデミックを起こした伝染病をご紹介します。

ぺスト

病原体

Yersinia pestis(エルシニア・ペスティス)という細菌が原因です。ネズミ等のげっ歯類が保菌しており、その血を吸ったノミ等を介して感染します。保菌動物から体液を介して直接感染することもあるようです。

ペストの歴史

ペストはこれまで3度に渡って大流行が起きました。1度目は、6世紀頃東ローマ帝国で大流行した「ユスティニアヌスのペスト」です。60年かけて近隣諸国に広がっていき、最終的に2500万人の死者を出しました。それ以降、西ヨーロッパでは一度ペストが消えたそうですが、14世紀になりアジアからシルクロードを介して入ってきます。これが2度目の大流行で、いわゆる「黒死病」と呼ばれたものです。ヨーロッパでは全人口の30%から60%が死亡しました。ヨーロッパだけではなく世界中で猛威を振るい、結果として7500万人以上の死者を出したそうです。その後は17世紀末に至るまで各地で流行を繰り返していましたが、19世紀になり、香港から世界中へ広がっていくという大流行が発生しました。これが3度目の大流行です。この流行で中国とインドだけでも1200万人が亡くなったそうです。ペストは現代(21世紀以降)でもまだ撲滅しておらず、世界のあちこちで患者が認められています。2004-2015年の12年間で、全世界で56,734名の患者が発生し、死亡者数は4,651名(死亡率 8.2%)だったそうです。

ペストの症状

症状は以下の3種類に分けられます。

  • 腺ペスト
  • 敗血症型ペスト
  • 肺ペスト

腺ペスト

リンパ節がアヒルの卵大に腫れ、発熱、頭痛、悪寒、倦怠感等の全身症状が出ます。

敗血症型ペスト

ペスト菌が血流にのって全身に回ることで起こる型です。急激なショック症状、昏睡、手足の壊死、紫斑等がみられ、2~3日以内に死亡します。

肺ペスト

最も危険なタイプで、腺ペストの末期あるいは敗血症型ペストの経過中にペスト菌が肺を侵し、肺炎を起こすタイプです。気道分泌物を介してヒト-ヒト感染が起こります。この型に移行すると、通常24時間以内に死亡するそうです。

ペストで参考にした資料:国立感染症研究所Wikipedia

天然痘

病原体

天然痘ウイルス(Poxvirus variolae)というウイルスが原因です。飛沫感染によってヒト-ヒト間で拡がっていきます。

天然痘の歴史

紀元前より伝染力が非常に強く死に至る疫病として恐れられていました。2世紀にローマ帝国で発生した流行では350万人が亡くなったそうです。元々アフリカ、アジア、ヨーロッパで猛威を振るっていた感染症ですが、コロンブスの上陸以降アメリカにも侵入して来ます。これ以降、アメリカの先住民族は甚大な被害を被ります。アメリカ大陸の各地において、その歴史の時々で人口が激減するような大流行が発生しました。

症状

急激な発熱が2-3日続き、次いで全身に発疹が生じます。ウイルス血症により肺炎や脳炎等を起こし、死亡します。死亡率は病原性の高い株で20-50%です。

種痘の開発

イギリスの医師エドワード・ジェンナーは、「牛痘に感染した乳搾りの女性は天然痘にかからない」という経験則に注目し、雌牛の牛痘の発疹の汁を取り出し、それをワクチンとして摂取する方法(種痘)を思いつきました。試してみると効果てき面で、種痘後に天然痘の膿を接種しても反応が何もみられませんでした。この発見は世界を一変させる人類の歴史上非常に重要な発見となりました。ちなみにワクチン(vaccine)の語源は、ラテン語の雌牛(vacca)から来ているそうです。

人類が勝利した病気!?

実は天然痘は人類が感染症に打ち勝った事例として有名です。1958年当時、世界中に蔓延していた天然痘でしたが、世界保健機構(WHO)主導の元、「世界天然痘根絶計画」が遂行されます。戦略的なワクチン接種を行い、ついに1980年、WHOによって「天然痘の世界根絶宣言」が宣言されます。かつてのWHOはこんなにも頼りになる存在だったのです。

天然痘で参考にした資料:国立感染症研究所Wikipedia

コレラ

病原体

コレラは、Vibrio cholerae(ビブリオ・コレレ)という細菌が原因です。このコレラ菌に汚染された水や食物を介して経口感染します。

コレラの歴史

コレラの世界的流行は、7回記録されています。第1 次流行(1817年-)から第6次流行(1899年-)までは全てインドのベンガル地方から発生し、世界中に拡がりました。第7次流(1971年-)はインドネシアからで、現在も依然として流行の最中です。

症状

軽症の場合は、軟便もしくは一日数回の下痢がみられます。しかし重症の場合は、突然の下痢と嘔吐に始まり、ショックを起こします。下痢の性状は「米のとぎ汁様」と形容される灰白色の水様便が特徴的です。

豚コレラとは違うの?

去年から今年にかけ、ブタの伝染病として世間を騒がせた豚コレラと名前が似ていますが、全く別の病気。こちらは人間には感染しません。誤解から風評被害が生じるとの懸念から、豚熱と名称が変わりました。

コレラで参考にした資料:国立感染症研究所

インフルエンザ

病原体

流行を起こす病原体として、インフルエンザA型とインフルエンザB型があります。特にA型は、15種類のHA抗原9種類のNA抗原の組み合わせによって多くのタイプがあります。

インフルエンザの歴史

毎年冬になると流行を繰り返しますが、それとは別に数十年毎に世界的大流行が起きています。例えば、1918年に起こった「スペイン風邪」は世界中で猛威を振るい、5000万人が亡くなりました。これは、同年に終結した第一次世界大戦よりも多くの命を奪ったそうです。その後も1957年のアジア風邪(H2N2)、1968年の香港型(H3N2)、1977年にソ連型(H1N1)と大流行を繰り返してきました。これらは、不連続抗原変異(異なる2種類のインフルエンザウイルスが組み合わさり、新ウイルスができること)によって発生します。

ブタから新型ウイルスが発生する!?

インフルエンザウイルスはヒトだけではなく、その他の哺乳類や鳥類にも感染します。鳥インフルエンザウイルスは、多くの場合ヒトには感染しません。しかしブタには鳥インフルエンザが感染すると言われています。しかも悪い事に、ブタはヒトのインフルエンザウイルスにも感染します。もしブタが鳥とヒトのインフルエンザウイルスに同時に感染したら、ブタ体内でウイルスが組み替えあい、新種のウイルスができてしまうことが知られています。これが新型インフルエンザが突然発生する仕組みと考えられています。

インフルエンザで参考にした資料:国立感染症研究所厚生労働省

最後に

さて、ここまで有名なパンデミック発生例をご紹介してきました。現在進行形で拡大を続けている新型コロナウイルス感染症も収束する兆しは今の所見えませんが、これまでの歴史を振り返るに必ず収束の時はやってきます。大変な事も多いですが、それまで一緒に頑張りましょう!

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